生きたまま埋めるのはかわいそうだよ

シュールな世界観がいいね~って棒読みで言って

 今日も9時くらいに起きて10時くらいに家を出た。着替えてるときに珍しく電話が2件かかってきたのでかけなおした。
 東京のかなり千葉寄りの街、駅前のマクドナルドで雑事をしてから1時間くらい寝た。中毒気味のTwitterはアプリを消して見ないことにした。とりあえず今日のうちは。


 ふだん、誰しもいろんなことを考えて生きていると思うが、僕の頭で考えられることは全部考えてしまったような気がする。一巡した。
 本を読んで考えることの幅を広げた方がいいんだと思うけど、やる気がない。
 せっかく本を読んでいろいろなことを知っても、それを全く人生に活かせないから。
 そういう人はけっこう多いと思う。僕も大学まで出たけどゆくゆくは掃除とかやって生きていくのかな。

 

 楽しそうに生きている人を全然観測できない。よくみんな生きているなと思う。もっと気軽に人が自殺していれば、死へのハードルが下がっていいと思う。こういう言い方はよくないか。ポジティブな自殺があってもいいと思う。
 UFOキャッチャーは「次こそ取れるはず」と思ってお金を入れ続けてしまうが、人生も「明日こそいいことあるはず」と思って生き続けてしまう。どうせいいことないなら早く諦めたい。

 

 こういうネガティブなことは自分で書く分にはいいが、人が書いているとむかつく。キャラ作りとしか思えない。「私はこんな地獄を生きているんです、あなたにはこの苦しみがわからないでしょうね」みたいなこと思ってそう。
 俺の人生が一番つらい!いや俺の方がつらい!というバトル。僕も参戦したいがわりと早い段階で負けてしまうだろうなあ。
 バトルなんかやめなよ。みんなの苦しみは全部平等に尊重されるべきものだよ。

 

 僕は今はぜんぜんつらくない。最高の気分だ。ただ楽しみ方がわからず途方に暮れているだけだ。

 

サボり⑪

24歳の僕の話はめちゃくちゃつまらなかった。ああいうのが一番だめだと19歳の僕は思う。もう二度と登場しないでほしい。
最近は、おじさんと土手を滑ったり、空木と喧嘩したり、豚を殺したり、24歳の僕が現れたり、といろいろなことがあって大学をサボり気味になっていた。そろそろゼミの出席数が足りなくなる。ゼミの単位を落として再履修になると、「クローズドな集団に参入する」という心理的障壁の高いことをまたやらなくてはならない。それは避けたい。
久しぶりのゼミでは久生十蘭の「母子像」という短編を取り扱っていた。僕は女の子がたくさんいる空間にいることが嬉しくて、あまり人の発言が耳に入ってこなかった。
ゼミが終わるとすぐ帰る人もいるが、そういう人というのは概して社交的ではない。僕も本来はそういうタイプなのだが、少し人と喋りたくて、わざともたもたとレジュメをトートバッグにしまったり、メールが来ていないか確認したりしていた(来てなかった)。川村さんが話しかけてきた。
「今度ゼミ飲みやるんだけど、来ない?」
「ゼミ飲みかぁ」川村さんは、栗色の長い髪を緩く巻いていて、笑うと目が横に倒した三日月のように細くなるのが色っぽく、笑ってないときでも口角が上がっちゃっている口元がキュートなお嬢さんだったので、二つ返事でイエスと言ってもよかったのだが、いろいろ予定があって忙しいやつなんだと思われたくて、渋るフリをしてしまった。「どうしようかな」
「いこうよう」
この「必要とされている感」くらい心地いいものはない。あとで知ることになるが、川村さんの異様に愛想のいい態度を勘違いしてしまう男はよくいて、でも彼女は媚びているのではなく単に育ちがいいだけだから、いつも変な奴が寄ってきて困っているらしい。それに川村さんには、東大を目指して三浪しているクズの彼氏がいるらしい。一生受かるな。
「うーん、じゃあ行こうかな。いつ?」
別にバイトもしていないのでいつだっていいのだが。
「金曜の5限のあと!」
携帯で予定を確認するふりをして「大丈夫」と答えた。
「来てくれるって」と川村さんが、隣の子に伝えた。
「男子一人じゃん」とその子が答えた。前歯が大きくて背が高い。名前はわからない。
「あれ、空木は?」そういえば今日は空木がいない。
「え、最近見ないよ。仲いいんじゃないの?」と前歯の子が言う。
「いや、別に・・・・・・」
喧嘩したとはいえ、空木のことは多少気になった。しかし、男子一人というのは非常に好都合なので、ゼミ飲みが終わるまでは連絡を取らないようにしようと思った。ちなみにゼミにいるほかの男子は、居酒屋のキャッチみたいなやつも野球部っぽいやつも不参加とのことだった。猫背に眼鏡の、僕が一番推してる女の子も不参加というのはやや残念だった。
このゼミ飲みに参加することで、僕の白紙状態の女性経験に変化が起こる。

サボり⑩

鎌倉に行くつもりで家を出たが、赤羽についたあたりでやはりやめることにした。
別に深い理由があるわけではない。ただ行かなくてもいいと思ったのだ。
湘南新宿ラインに乗って恵比寿に来た。
恵比寿のドトールで一休みしていると、現在、19歳であるはずの僕が、いつのまにか24歳の僕になっていた。僕は、大学を卒業して中小企業の営業職に就いたらしいが、どうやら鬱屈としているらしい。
仕事は大変ではない。サボっているからだ。しかしサボっているといっても要領のいい人のサボり方ではなく、単なる逃避としてのサボりであるため、営業成績は悪い。上司はもちろんそのことには勘付いているのだが、僕の自主性を尊重してか、遠回しにしか指摘してこない。いつ本気で怒られるのかがわからず、常に怯えながらサボり続けている。
会社の外では子供の小さな悪事自慢のように「今日はこれだけサボった」と吹聴して回っているが、そのことも、いつ上司に怒られるかわからない不安感を誤魔化しているだけなので、自分を情けなく思うだけだ。
そんなに後ろめたいと思うのならちゃんと仕事をすればいいじゃないかと誰もが思うだろうが、全くやる気が湧いてこない。
先ほど転職サイトに面談のメールを送った。しかし他の仕事がしたいわけでもない。
こうして思考をわかりやすい形で言葉にしてまとめるのは落ち着く。それ以外はTwitterを眺めるくらいしかやることはない。
いまこうして書いていることはすでに何百回と考えて、実際に活字にしたこともある思考に過ぎない。もしかしなくても、これを読んでいる人の大半は聞き飽きた話だろう。
こんなことはいくら考えても前に進めないとも思う。では、僕は実際に行動を始めるべきなのだろうか。
思考と行動の二項対立があるとして、ものを書くということはどちらに属するのだろうか。よく政治的な発言をする学者や評論家に対して、「そんな机上の空論を述べてないで実際に行動しろ」という人がいる。僕は、それはおかしいとも思うし、そうかもしれないとも思う。
僕だって政治的な発言をしてもいい。どれだけかっこいい思考を文章にして披露してもいい。でも僕は、親元も離れず、仕事もサボって、甘えた生活を送っている雑魚の市民なのだ。僕がどんなことを言っても説得力がない気がする。
以前にTwitterである人が言っていたが「反権力」を標榜しているような人が実家暮らしのブルジョワ文筆業者だったりするのだ。あと町田康も言っていたが、パンクというのは聞きたいと思う人が少ないので食っていけない。パンクをやるにはなんらかの副業をしなければならないので、結局生き様としてはパンクではない、と(生き様云々は町田康が言っていたのではなく僕の解釈だ)。
19歳の僕は思う。「24歳の俺の話長いなぁ」
24歳の僕は答える。「ごめんね。悪いけどこれまだまだ続くんだ。でも今日めずらしくこの後アポあるからいったん中断するね。じゃあまたあとで!」

サボり⑨

ホームセンターで買った断ち切り鋏をもって千葉県の君津駅まで電車で移動した。
牧場内では多くの家族連れの客が休暇を満喫していた。トイレで断ち切り鋏を開封し、後ろ手に持った状態で柵に近づき、至極当然といった顔つきで乗り越え、豚小屋に入り込んだ。断ち切り鋏を振りかぶって思い切り豚の背中に突き刺そうとした。が、刃は豚の表皮を滑り、軽い切り傷をつけたにとどまった。豚がゴムで流し台を擦ったかのような甲高い声で鳴く。もう一度振りかぶって突き刺そうとしたが、やはり滑る。予想以上に素早い動きで豚が逃げるので、まだ状況を理解していない目をした別の豚を上から抑え込み、断ち切り鋏を真下に向けて突き刺した。豚の表皮が避け、新鮮な果汁のように血液が溢れ出すが、刃は2センチほど刺さったのみだ。駆けつけた飼育員の男が、「おい、やめろ!」と叫ぶが、刃物を恐れてか近寄ろうとはしない。どれだけ力を入れても豚が鳴き叫び暴れるのみでこれ以上深くは刺さりそうにない。断ち切り鋏を抜き取り、眼前に翳しながら慎重に柵を乗り越える。絶対に飼育員から目を離さない。彼は両手を胸の前に構えているが、指先は震えている。柵の上から飛び降り全速力で牧場を駆け抜ける。来客は悲鳴を挙げる。母は子を庇い、男はガールフレンドの手を取り、道を開けてくれる。ゲートを越えるときものすごいスピードで警備員が駆け寄ってくる。なるべく鋏をもった腕を強く振り回して威嚇しながら自動改札機のフラップドアのようなものを蹴破る。牧場を出ると誰も追ってこなくなったため、鋏をポケットにしまい、ペースを落とし、上がった息を整えながら、駅へと向かった。黒いTシャツを着ていたのが幸いし、返り血はあまり目立たなかった。
家に帰ると服を脱いで全てビニール袋に詰めてから全裸で布団を被って寝てしまった。
起きると午後1時だった。最近は大体いつも眠い。大学の講義はそれなりに受けるようにしているが、音楽鑑賞サークル「天狗」に顔を出すことはなくなった。空木とも会うには会うが、2,3分世間話をするだけで一緒に昼食をとったりはしない。そのように人付き合いを断つとやはり暇が生まれるわけで、何か面白いことないかなと考えていた。
本屋、図書館、ブックオフなどは頻繁に行き過ぎているので、行けば行くほど自分の人生が同じことの繰り返しのように思えてくる。今日は少し趣向を変えて海にでもいってみようかと思った。
僕にとって海といえば鎌倉だ。やはり関東圏で手軽に海に行くとなると鎌倉になってくる。他にもあるのかもしれないが、鎌倉だろう。とにかく鎌倉である。赤羽から湘南新宿ラインで一本だ。海に浸かってもいいように短パンを履き、脚を拭けるタオルを用意して、いざ出発。

サボり⑧

やはり空木は頭がおかしい。狂っている。
僕はキチガイは嫌いだ。でも僕の周りはキチガイまみれだ。
嫌な気持ちになった。僕は嫌な気持ちでいるのは嫌だ。何か気晴らしをしなければ。
だが、残念ながら僕は気晴らしの仕方も知らないのだ。
空木には自分が悪かったということで場を収めたが、僕は別に悪くない。空木が喫煙所に行くタイミングで帰路についたが、別れて数歩歩いたくらいでたまらなくむしゃくしゃして地面に唾を吐いたら、近くにいた猫ちゃんをびっくりさせてしまった。猫ちゃんは塀の向こう側に去っていった。
コガネムシが飛んできて僕の肩に止まった。
さっきから汗が止まらない。
コンビニで缶ビールを買った。歩きながら飲む。
道路を横断すると、車がクラクションを鳴らして急ブレーキをかける。
繁華街に出た。ふくろうのお店があったので入った。
泊まり木にフンがべっとりと付着している。乾いた獣の匂いがする。
ふくろうの一匹と目を合わせる。ずっとこちらを見ている。向こうが先に目をそらした。僕の勝ちだ。
ふくろうの店を出て、ファーストキッチンに入った。コーラフロートを頼んだ。
すぐに食べきってしまうと、猛烈に腹が痛くなったきて、トイレに駆け込んだ。
下痢をしてスッキリした。
何か気晴らしがしたい。何か気分が晴れること。
だめだ、何も思いつかない。
僕はコンビニに入って、ハイボールの缶を買った。
アーケード街を歩きながら飲む。
向こうから村田が歩いてきた。「お!元気?」と声をかける。
村田は怪訝そうな顔でこちらを見てから、すぐに見なかったことにして、そのまま歩き去っていった。
なんて失礼なやつなんだ。
村田とはどこで知り合ったのだったか。記憶を辿りながら歩く。
古本屋がある。誰が読むのだろうという本がたくさんある。全部いらない本だ。やめちまえ。
考えてみれば僕には村田という名前の知り合いはいなかった。
ネットカフェの看板が出ている。少し休もう。
5階に登るエレベーターの中で、エレベーターのカーペットみたいな素材の壁の匂いが嫌で戻しそうになる。しかし堪えた。
受付で手続きをして、85番の部屋を案内された。
靴下を脱いで眠った。
自分のせいでいろんな人に迷惑がかかり、責められる夢を見た。よく見るやつだ。
起きたとき唾液が床に溢れてしまっていたのでティッシュをとって拭いた。5時間パックだったのでまだ時間に余裕があったが、出ることにした。
大分酔いが覚めて、調子が良くなってきた。左手を右肩に当てて右腕を回したら通行人にぶつかってしまったので深くおわびした。
さて、豚を殺しに行くか。

サボり⑦

次の日も荒川の土手に行ったが、おじさんはいなかった。大学の講義があったので、少し日光浴をしてから引き上げた。その次の日は雨が降っていて、大学に行く気にもなれなかったので、家でゴロゴロしていた。その次の日に土手に行くとおじさんがいた。おじさんは、僕のいるいないに関わらず毎日土手に来ていたらしい。
おじさんは博識なようで、仏教の話や哲学の話をいろいろしてくれたが、僕にはほとんど理解できなかった。おじさんは柳宗悦の本をくれた。
ゼミが始まる前の時間に、柳宗悦の本を漫然と眺めていると空木が話しかけてきた。
「どうしたの、本なんか読んで」
「おじさんにもらったんだ」
「おじさん?」
「まあ、話すと長くなる。それより今日テストやるんだっけ。何出るか知ってる?」
空木も出題内容は把握してなかったが、テストというより授業内レポートだったので、適当にお茶を濁した。
学食に行こうと空木を誘った。
「なんか久しぶりだな。最近どうよ?」
空木がラーメンを啜る手を止めて言った。
「最近どうよ、っていうのは漠然とした質問だよね」と僕は答えた。
「うわ、この感じ。この感じね」
空木はなるとを食べた。
僕は今日は油淋鶏ではなく、うどんを食べている。
おじさんとのエピソードを一通り話し終えると、空木が疑問を投げかけてきた。
「そのさっきからちょくちょく出てくる"生の実感"ていうのはなんなの?」
「それはわからん。なんだと思う?」
「だって現におまえは生きているじゃん。それじゃだめなの?」
「それじゃだめなんだ。やっぱり人間って志がないと生きていけないんだよ。だって別にどうなってもいいと思ってるからね。自分が」
空木は立ち上がり、平手で僕の頬を叩いた。
呆然としていると、空木はもう一度叩いた。痛い。
3回目のビンタが飛ぶ前に空木の腕を掴んだ。「どうした」
「いや、おまえがどうなってもいいっていうから」
「どうなってもいいって言ったけど、そういうことじゃないんだよ」
「"どうなっても"だろ?こうなることだってその"どうなっても"の中に含まれてるだろ?」
「含まれてないよ」
「じゃあおまえの"どうなっても"はおまえが自分の都合でその範囲を限定できる"どうなっても"なわけだ。それは本当の意味で"どうなっても"と言えるか?」
「わかった。ごめん、どうなってもよくはない。ビンタはやめてくれ。お願いします」

サボり⑥

荒川の土手に行くときはダンボールを持っていくのがおすすめだ。といっても箱として利用するわけじゃない。展開して、一枚の板のようにする。それを尻に敷いて滑る。
これは本当に危険な遊びだ。体の小さな子供がやるならそれほど速度も上がらないが、僕のようにある程度成長した人間が土手を滑ると勢いがつき過ぎる。
滑り降りる途中で石に衝突したときは、前方につんのめってそのまま転げ落ちた。体のいたるところを地面にうちつけ、涙が出そうになったが、文明化され危険から隔離された人間は、このようにして生の実感を取り戻す必要があるのだろうと思い、痛みを堪えた。
そうして土手を滑り、失敗し、転げ落ちている様は、自然と人目を惹いた。あるとき「大丈夫?」と声をかけてきたおじさんがいた。
おじさんはラーメンの汁が跳ねたようなシミのついたスウェットを着ていたので不潔そうで嫌だったが、体臭などはしないとわかるとそれほど嫌ではなくなった。話によるとおじさんは図書館の司書をしていたが、盗撮をしていて捕まってしまったらしい。書架の下の方の書物を整理するふりをして小型カメラでスカートの中を撮っていたところを私服警備員に取り押さえられたそうだ。
「今は、薬を飲んでるからだいぶ落ち着いているけど、昔は若い女の子の下着のことで頭がいっぱいでね」
「僕も若い女の子の下着、興味あります」
おじさんは人差し指を立てて左右に振ってみせた。
「そんなんじゃないんだよ。もう心臓が裂けそうなくらいパンツがみたいんだ。きみは我慢できるでしょ。俺は変態なんだ。変態の星の下に生まれついたんだよ。」そういっておじさんは乾いた声で笑った。
「あとは女の子が捨てたペットボトルとかストローが挿さってる紙パックを回収していたね。こんなことをいうと不謹慎かもしれないけど、あの頃が一番楽しかったよ」
「今は毎日何をしてるんですか?」
「毎日絵を描いてるよ。アイドルの画像をインターネットで調べて、模写してる」
「誰が好きなんですか?」
「それはねー、篠崎愛かなー」
おじさんは46歳で、もう10年以上は親の金で生きているらしい。幸い、贅沢をしなければ死ぬまで働かなくてもいいくらいの財産はあるようだ。
おじさんにダンボールを勧めたが、体重の乗せ方が下手なのか微動だにしない。「これはちょっと恥ずかしいなぁ」といって諦めて立ち上がろうとするおじさんを「盗撮より恥ずかしくないから大丈夫です」と言って制止した。
おじさんの背中を押すとゆっくりと滑り出した。と思っていたらみるみるうちに勢いがつく。土手は斜面、平面、斜面となっているので、平面から斜面に差し掛かるときに一度ふわっと宙に浮くときがある。おじさんの勢いがすごすぎて、ミサイルのように宙に射出された。案の定そのあと着地には失敗し、ゴロゴロと転げ落ちた。
「大丈夫ですか?」
おじさんはグッタリとしていて、目の焦点も定まってなかった。しばらくして息が落ち着いてくると「大丈夫」とか細い声で答えた。
「なんかすみません」
「いや……生きてる実感が沸くね」
そういって乾いた声で笑った。盗撮のおじさんが、自分と同じような感想を抱いたのは少し嫌だった。