生きたまま埋めるのはかわいそうだよ

シュールな世界観がいいね~って棒読みで言って

Yと連絡が取れなくなった。考え得る連絡先は全てあたった。一度だけ彼の家に行ったことがあったから、直接訪問しようと思った。 寒かった。一度コートを羽織って外に出たが、北風を防ぐことはできそうになかった。見栄えは悪いが防寒性に富んだダウンに着替…

ラップにとって「やる」とは何か。

企業のCMでも何かとラッパーが起用されがちな今、ラップブームが起きていると言っても異論の声は……まあ多数上がるだろうが、とりあえずラップブームとします。 しかし、「ロック等のポップミュージックは好んで聴くが、ラップは受け入れがたい」という声を耳…

サボり⑪

24歳の僕の話はめちゃくちゃつまらなかった。ああいうのが一番だめだと19歳の僕は思う。もう二度と登場しないでほしい。最近は、おじさんと土手を滑ったり、空木と喧嘩したり、豚を殺したり、24歳の僕が現れたり、といろいろなことがあって大学をサボり気味…

サボり⑩

鎌倉に行くつもりで家を出たが、赤羽についたあたりでやはりやめることにした。別に深い理由があるわけではない。ただ行かなくてもいいと思ったのだ。湘南新宿ラインに乗って恵比寿に来た。恵比寿のドトールで一休みしていると、現在、19歳であるはずの僕が…

サボり⑨

ホームセンターで買った断ち切り鋏をもって千葉県の君津駅まで電車で移動した。牧場内では多くの家族連れの客が休暇を満喫していた。トイレで断ち切り鋏を開封し、後ろ手に持った状態で柵に近づき、至極当然といった顔つきで乗り越え、豚小屋に入り込んだ。…

サボり⑧

やはり空木は頭がおかしい。狂っている。僕はキチガイは嫌いだ。でも僕の周りはキチガイまみれだ。嫌な気持ちになった。僕は嫌な気持ちでいるのは嫌だ。何か気晴らしをしなければ。だが、残念ながら僕は気晴らしの仕方も知らないのだ。空木には自分が悪かっ…

サボり⑦

次の日も荒川の土手に行ったが、おじさんはいなかった。大学の講義があったので、少し日光浴をしてから引き上げた。その次の日は雨が降っていて、大学に行く気にもなれなかったので、家でゴロゴロしていた。その次の日に土手に行くとおじさんがいた。おじさ…

サボり⑥

荒川の土手に行くときはダンボールを持っていくのがおすすめだ。といっても箱として利用するわけじゃない。展開して、一枚の板のようにする。それを尻に敷いて滑る。これは本当に危険な遊びだ。体の小さな子供がやるならそれほど速度も上がらないが、僕のよ…

サボり⑤

音楽鑑賞サークル「天狗」にはちょくちょく顔を出していたが、やることといえばゲームをするくらいだったので、本当に活動らしき活動はないとわかった。4月の段階で気を張り過ぎたのか、僕はどっと疲れてしまった。大学にどうしても行きたくない日は行かなか…

サボり④

男は立っていた。立っているのが不気味で、「立っているなよ」と思ってしまった。人間は普通、部屋にいるときは座っているからだ。だが、立っていることだってあり得る。それはどういう状況かというと踊っているときだ。人間は座ったまま踊ることはできない…

サボり③

空木が煙草を吸いたいというので喫煙所に来た。僕は自分の腕をさすったり、顎を撫でたり、iPhoneを出したりしまったりすることに専念した。「おまえすげぇよ」「そうかな」あまり褒められることに慣れていないのでこそばゆい心地がした。「おまえみたいに気…

サボり②

僕の高校から、その大学へ進学するのは僕一人だった。送付された資料のどこかには記されていたのかもしれないが、気づいたらオリエンテーションとやらは終わっていた。どこからも情報が入ってこないので仕方がなかった。単位の組み方がわからず教務部に行っ…

サボり①

「何を考えているんだ」と言われることがしばしばあったが、何か考えて行動しているわけでもなかった。高校の体育の授業中、たまたま手元にバスケットボールが回ってくると僕は立ち尽くしてしまった。誰にこのボールを渡せばいいのかわからなかった。教師が…

架空日記

友人に、僕に似てる人がいるので会ってみないかと言われた。会ってみることにした。 何故そう思ったのかというと、本当は知らない人と会うのなんて好きではないのだが、それが好きでないという事実が自分の人生に与えてきたダメージを考えると、僕は多大な損…

ありきたりな話

君は俺の話を聞く気がないし俺も君の話を聞く気がない。いやそうだろうか。君は今俺の話を聞かされている。可哀想に。じきに君は俺の話に飽きるだろう。もしくは俺が俺の話に飽きるのかもしれない。まあいい。続けよう。俺は絶対に君を楽しませたりはしない…

日本一高い塔が、東京タワーから東京スカイツリーへとなり代わったのが、いつのことだったかを正確に把握するほど、高い塔というものに興味があったわけではないが、東京スカイツリーからちんぽへとなり代わった年を正確に把握しているのは、履歴書に何度も…

ロボット

久々に会ったO君は昔の面影をまるで残していなかった。太りすぎていた。ただでさえ細かった目が頬の肉でさらに細く見えた。 「O君は最近何してるの?」 「筋トレ始めたよ」 そんなことが聞きたかったわけじゃなかったが、「最近何してるの?」と訊いて面白…

自分はなんとしても彼女にこの手紙を届けなければならない

自分はなんとしても彼女にこの手紙を届けなければならない。自分はなんとしても彼女にこの手紙を届けなければならない。雷鳴の轟く豪雨の中も、醜悪な毒虫や伝染病を運ぶ羽虫にまみれた藪の中も。突き進んでいかなければならない。その際に後ろを振り向いて…

トゲトゲの森

トゲトゲの森は巨大なソフトクリームのコーンを裏返したもので出来ているのだが、先日、暗黒平野調査団のヘリコプター内で痴話喧嘩のもつれの末乗組員4名が飛び降り、コーンの先に身を貫かれて死んだ。血液の付着したコーンにハイエナがたかり、サクサクとい…

僕の就職活動日記

現在私は就職活動中で日々さまざまな企業の説明会に参加している。今日行った企業はとんでもなかった。 まず、司会を務めている人事部採用担当者の話からひどかった。 「今日はどいつもこいつも同じようなバカヅラ下げてノコノコやってきたみたいだけど、お…

女のやさしさ

「ごめん私おしっこ!」 いってらっしゃい、と笑顔で見送りつつも、実際にNが用を足しているさまを思い浮かべてしまい、胸がざわついた。 自分も男子トイレに入ることにした。用を済ませ、手を洗っていると、女子トイレから甲高い笑い声が響いてきた。 男子…

嘘日記

今日は、とくに何もしなかった。携帯端末で他人が発信した生活に関する些細な情報を漫然と眺めて一日が終わろうとしている。 僕は椅子から立ち上がると鍵だけ手に取って、家を出た。なにもかもが、おもしろくなかった。 近くの公園ではいつものように若者が…