生きたまま埋めるのはかわいそうだよ

シュールな世界観がいいね~って棒読みで言って

僕の就職活動日記

現在私は就職活動中で日々さまざまな企業の説明会に参加している。今日行った企業はとんでもなかった。

まず、司会を務めている人事部採用担当者の話からひどかった。

「今日はどいつもこいつも同じようなバカヅラ下げてノコノコやってきたみたいだけど、おまえらの中から採用するのは二人だけってもう決まってるんだよね。『とりあえず』みたいな考えで説明を聞きに来たヤツは家帰ってホームページでもみてくれ。」

いきなりダルそうな調子で語り始めた二十代後半くらいのメガネをかけた男の発言に、空気が凍り付いた。

「今日はこれ、選考です。おまえら面接にそなえてお決まりのきれいごと練り上げてるのかもしれないけど、そういうのはウチは興味ないわけ」

男は手元のタブレットを触るが、とくに何かを調べているわけではなく、ただ単に触りたかっただけのようだ。

タブレットから顔を上げて一番前に座っている女子を見つめる。そしてこう言った。

「きみさ、うち第一志望?」

女子はやや考えてから「はい」とこたえる。

「いいね。」

男は深く何度かうなずく。

「君は今の時点で最も内定に近い人間だ」

そういって笑みをうかべる。女子はありがとうございます、と言う。

「ウチのためならなんでもする覚悟があるんだ?」

「・・・はい」

「じゃあまずジャケットを脱ごうか」

女子はやや戸惑いながらも素直に従う。

「次は靴を脱ごう」

「・・・・・・はい」

女子が靴を脱ぎ終わると間髪入れずに「次はシャツね」と言う。

さすがに女子は戸惑いをあらわにする。

「すみません、それは、できません」

「なんで?」

男はつかつかと女子のもとに歩み寄る。女子の胸倉をつかむ。

「おかしいだろぉぉぉぉ!!!!ああああああん!!???」

男は女子のシャツの前方をものすごい力で左右に引っ張り、ボタンが弾け飛ぶ。

女子は我が身を抱きかかえるようにしてうずくまる。すすり泣いている。

次の瞬間、僕は立ち上がり、内ポケットからコルトパイソンを取り出し、男の頭蓋に照準を合わせていた。

照準越しに男と僕の目が合う。

しかし、気づくとなぜか僕は椅子に座っており、拳銃も元通り心臓付近に収まっていた。

「ウチのためならなんでもする覚悟があるんだ?」

「・・・はい」

さっきも見たやりとりだ。なにかがおかしい。

「じゃあまずジャケットを脱ごうか」

男が言葉を発するのと同時に僕は悟る。

こいつ、時間軸に干渉してやがる。

「次は靴を脱ごう」

「・・・・・・はい」

男は時間軸に介入したが、「介入した」という自己認識は失われているらしい。

「次はシャツね」

もしこのあと、僕がまたコルトパイソンでヤツの頭をねらっても、結局同じことの繰り返しになる。

「すみません、それは、できません」

「なんで?」

あれを使うしかない。

「おかし

次の瞬間僕は極彩色のシャボン玉めいたマーブル色の空間にいた。

見ているだけで目がチカチカしそうな色彩に四方八方を囲まれている。かろうじて天地の感覚だけはある。

そして少し離れた前方に男が対峙している。目をぎらつかせて僕を睨んでいる。

「てめぇ、なにしやがった」

「お前が時間に干渉するなら、こっちは空間に干渉しようと思ってね」

「空間だと?」

「そうさ。僕とおまえだけの空間を現実の空間から『抉り取った』。ここは地球上のどこでもないところなんだ。概念的には『地球の裏側』と呼んでもいいかもしれないね。もちろん地表の下という意味ではないよ。」

「ごちゃごちゃうるせえ!さっさと元に戻しやがれ!」

僕は拳銃を取り出す。

すると男は時間に介入しようとする。

しかし僕が空間に介入する方が早い。

このマーブル色の空間から、さらに、もう一つの空間を「抉り取る」。

結果、僕らは「空間内空間」に現れる。

マーブルが二重になってさらにどぎつい色だ。

男のモーションは依然として時間介入のまま。

僕はそこに弾丸を放ち、空間内空間から抜け出す。

「そこで永遠に死んでな」

男の断末魔が聞こえる。

彼は自らが行った時間介入によって、あの空間内空間で弾丸を食らっては時間を巻き戻し、また食らっては巻き戻すことをいつまでも続けるのだろう。

壊れた玩具のように。

僕は元の現実空間に帰還した。

そこではあの男ではなく、女性社員が司会を行っていた。

また別の世界線なのだろう。

しかしあの女子は前と変わらず一番前の席で背筋をピンと伸ばし、一つ結びの髪の裏側にきれいなうなじをのぞかせていた。

帰り際にその女子に話しかけて、お茶でもしないかと誘ってみたが、虫を見るような目で見られ、丁寧にお断りされてしまった。

だれがお前を救ったと思ってるんだ。