生きたまま埋めるのはかわいそうだよ

シュールな世界観がいいね~って棒読みで言って

サボり⑪

24歳の僕の話はめちゃくちゃつまらなかった。ああいうのが一番だめだと19歳の僕は思う。もう二度と登場しないでほしい。
最近は、おじさんと土手を滑ったり、空木と喧嘩したり、豚を殺したり、24歳の僕が現れたり、といろいろなことがあって大学をサボり気味になっていた。そろそろゼミの出席数が足りなくなる。ゼミの単位を落として再履修になると、「クローズドな集団に参入する」という心理的障壁の高いことをまたやらなくてはならない。それは避けたい。
久しぶりのゼミでは久生十蘭の「母子像」という短編を取り扱っていた。僕は女の子がたくさんいる空間にいることが嬉しくて、あまり人の発言が耳に入ってこなかった。
ゼミが終わるとすぐ帰る人もいるが、そういう人というのは概して社交的ではない。僕も本来はそういうタイプなのだが、少し人と喋りたくて、わざともたもたとレジュメをトートバッグにしまったり、メールが来ていないか確認したりしていた(来てなかった)。川村さんが話しかけてきた。
「今度ゼミ飲みやるんだけど、来ない?」
「ゼミ飲みかぁ」川村さんは、栗色の長い髪を緩く巻いていて、笑うと目が横に倒した三日月のように細くなるのが色っぽく、笑ってないときでも口角が上がっちゃっている口元がキュートなお嬢さんだったので、二つ返事でイエスと言ってもよかったのだが、いろいろ予定があって忙しいやつなんだと思われたくて、渋るフリをしてしまった。「どうしようかな」
「いこうよう」
この「必要とされている感」くらい心地いいものはない。あとで知ることになるが、川村さんの異様に愛想のいい態度を勘違いしてしまう男はよくいて、でも彼女は媚びているのではなく単に育ちがいいだけだから、いつも変な奴が寄ってきて困っているらしい。それに川村さんには、東大を目指して三浪しているクズの彼氏がいるらしい。一生受かるな。
「うーん、じゃあ行こうかな。いつ?」
別にバイトもしていないのでいつだっていいのだが。
「金曜の5限のあと!」
携帯で予定を確認するふりをして「大丈夫」と答えた。
「来てくれるって」と川村さんが、隣の子に伝えた。
「男子一人じゃん」とその子が答えた。前歯が大きくて背が高い。名前はわからない。
「あれ、空木は?」そういえば今日は空木がいない。
「え、最近見ないよ。仲いいんじゃないの?」と前歯の子が言う。
「いや、別に・・・・・・」
喧嘩したとはいえ、空木のことは多少気になった。しかし、男子一人というのは非常に好都合なので、ゼミ飲みが終わるまでは連絡を取らないようにしようと思った。ちなみにゼミにいるほかの男子は、居酒屋のキャッチみたいなやつも野球部っぽいやつも不参加とのことだった。猫背に眼鏡の、僕が一番推してる女の子も不参加というのはやや残念だった。
このゼミ飲みに参加することで、僕の白紙状態の女性経験に変化が起こる。