生きたまま埋めるのはかわいそうだよ

シュールな世界観がいいね~って棒読みで言って

羽目の外し方⑤

久しぶりにいい気分になって終電で家に帰っていると、鬱野からスマートフォンにメッセージが来ていた。なんらかのwebページへのリンクだった。開くと、カップルと思しき高校生くらいの男女が、学校で行為に及んでいる動画だった。なんの説明もなくそのリンクだけ送ってくるあたり、マイペースなやつだなと思った。しかし、向こうは好意で送ってくれたわけだし、無碍にはしたくないので、義理で「最高ですね」と送ってみたが、そこから一週間近くなんの音沙汰もなくなった。

私は近所を散歩したり、本屋で立ち読みしたり、TSUTAYAでDVDを借りたり、ブログを書いたりしながら、そのどれもにどことなくつまらないなあという思いを抱きつつ日々を過ごしていた。私がそういえば見たことなかったなと思い『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を借りて家に帰る途中、鬱野からメッセージが来た。「花見しませんか?」

「いつですか?」

「いまからです」

私は井の頭公園に向かった。

吉祥寺駅の南口を出てまっすぐ歩いていると、次第に若者の咆哮や、歓声が耳に入るようになってきた。もうとっくに日は暮れていた。あんまり騒いでると警察来るよ、と謎の老婆心が浮かび上がってきた。

公園に入ると、お情け程度に、座ってボヨンボヨン前後に揺れる遊具やブランコなどがある、少し広い空間に出た。井の頭公園は池をぐるっと囲う形で土地が展開されている。池は一周するのに10分くらいはかかるので、かなり広い公園だ。若者がたいした動機もなく集まるにはこの上なく適している。

一人の男が叫びながら木と木の間を高速で駆けたり停止したりしている。上半身は裸で細身の体が目立つ。叫びの内容に耳を傾けると「どうすればいいんだよ俺は!」「国家レベルの陰謀なんじゃないか?」と頭のおかしいような、その演技なのかわからないが、とにかくよくわからないことを言っていた。あまり関わりたくないな、と思いながら横を通り抜けた。遠巻きに男を見ている人が4人ほどいた。彼らは笑っていたので、どうやらそういう「催し」であって、本当に狂っているわけではないようだ。よく見ると4人のうちの一人は鬱野だった。つまりこの男を含めた5人が花見のメンバーというわけである。座る用のシートもなく、もう暗くてろくに花も見えない、何のための集いなのかよくわからないものに自分も加担するのかと思うと緊張した。

「鬱野さん、鬱野さん」

鬱野は一瞬「誰?」という顔をしてからすぐに合点がいったようで、

「おーーーう!水草さん!」

と大声を出して抱きついてきた。酒臭い。